寛政元年創業 京都 田中長奈良漬店

製法について

「都錦味淋漬」のおいしさができるまで

主に京野菜の伝統を受け継いだ野菜を原料としてつくる都錦味淋漬。
その味わいの秘けつは、一貫して人の手にゆだねられる丁寧な工程にあります。
野菜を前処理したあと、一度塩漬にしてから酒粕の漬床(粕床)に移しかえます。
塩漬した野菜を粕床で寝かせているあいだに、
野菜の塩分は少しずつ外へしみ出ていきます。
かわって酒粕に含まれるうま味成分がじわじわと野菜のなかに取り込まれていくのです。
酒粕の塩分濃度を徐々に低くしながら、この工程を何度かくり返します。
そうして待つこと二年。都錦味淋漬のまろやかな香味が生まれるのです。

  • 1. 野菜の収穫と前処理

    収穫された野菜を集め、塩漬の前処理を行います。都錦味淋漬を代表する野菜”うり”は”桂瓜”と呼ばれ、かつては京都の桂で栽培され弊店で塩漬していました。やがて桂で瓜の栽培が廃れ、品種改良も行われました。現在では、徳島県で栽培され、現地で塩漬したあと弊店へ運ばれます。

  • 2. 塩漬(半年〜1年)

    前処理した野菜を塩漬にします。野菜の水分を取りのぞき、塩分と置きかえる作業です。”うり”の場合、瓜を一晩塩漬し、野菜の水分(粗水)を取りのぞきます。製品の歯切れに影響する大切な工程です。その後、たっぷりの塩をつかって塩蔵します。

  • 3. 下漬(荒漬)(半年~1年半)

    塩漬した野菜を酒粕の漬床(粕床)へ漬けかえます。酒粕には適度な塩分が含まれており、製品の底味をととのえる工程となっています。

  • 4. 中漬(二、三度目)(半年~1年)

    野菜の塩分をぬきながら、酒粕のうま味成分をさらに野菜に移していきます。野菜の種類や漬け込み具合によっては、二度目を省略することも。3〜4種類の漬床があり、それらを組み合わせながら製品の味をととのえる工程です。

  • 5. 上漬(仕上げ漬け)(2〜3ヶ月)

    塩を含まない上質の酒粕にみりん粕と糖分を加えた漬床に、中漬を終えた野菜を漬け込み、熟成期間をおいて仕上げます。塩漬から2年の月日をかけて、ようやくまろやかな香味の都錦味淋漬ができあがります。

  • 6. 包装工程

    熟成された都錦味淋漬に包装をほどこし、製品化したらいよいよ皆さんの食卓へあがる準備が整います。

野菜の楽しみ方をひろげた奈良漬。

ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜は、日本の食卓に欠かすことのできない食材です。とくに日本の伝統と文化をつないできた和食には、野菜を使った料理が多彩にあります。漬物もそのひとつ。塩によって保存がきくように考案された漬物のおかげで、日持ちしない季節ごとの野菜が年間をとおして食べられるようになりました。奈良漬は、一度塩漬した野菜を酒粕の床に漬け、野菜の塩分と酒粕のうま味成分を置きかえたもの。漬物のなかでもより手間かけた嗜好性の高さから、根強い愛好者を中心に親しまれてきました。

あせらず急がず、じっくり二年かけた味わい。

奈良漬のしゃきしゃきとした独特の歯ごたえは、野菜の細胞がこわされていない証です。野菜の塩分と酒粕のうま味成分を置きかえるときも、少しずつ塩分濃度を減らしていくことが肝心です。長い歳月をかけ、粕床の塩分と酒粕の割合をかえながら、何度もの何度も漬けかえを行う理由はここにあります。私たちが手しごとにこだわるのは、この漬けかえ作業がとても繊細さを必要とするため、機械にまかせることができないから。野菜の細胞を守ることがおいしさと栄養を守ることにつながるのです。